すべては銀行員の一言から始まった「社長、ビルを買いませんか?」(1)
2016年頃のことだったと思います。取引をさせていただいている信用金庫の担当者からこんな提案を持ち掛けられました。
「社長、綾瀬にいい中古のビルが売りに出されているんです。いかがですか?」
価格は1億5千万円くらいだったと記憶しています。いくら業績好調とはいえ当社はまだ社員10人程度のベンチャー。そんなお金がポンと出るわけではありません。ということは当然「お金を貸してくれる」ということ。金融機関のそういう評価がうれしいなぁ、と。でもその物件は残念ながら間取りなどが求めるものとは違いました。でその話は流れました。
そして2017年。会社もさらに少し成長しました。綾瀬駅周辺で事務所を3か所、社員の社宅が3件。その月間の賃料合計は一カ月で150万円近くになっていました。そこでふと思ったのです。「毎月150万円を返済する力があれば2億円くらいのビルが買えるなぁ。事務所と社宅を統合できるような間取りの物件ってあるのかなぁ」
で、ネットを見ました。すぐにこの物件(=ホワイトパレス)に出会いました。場所は綾瀬駅から徒歩20分。そこが微妙でしたが。間取り図がこれでした。
「なにこれ。面白い間取りだなぁ。事務所も社宅も全部ここにまとめることは確かにできそうだ。」
価格は2億円弱でした。
さっと計算。今は便利。このサイトを使えばスマホで一瞬でローンシミュレーションができます。
「全額借りて・・・25年くらいの返済で・・・金利はおそらくこのくらいで・・・」
「月間の返済が約80万円か。固定資産税は年100万円もしないだろう。実質月90万円くらいか・・・」
しかもこの物件、賃貸マンション経営ゾーンが満室稼働中で月45万円ほどの家賃収入があります。「ということは実質の負担は月額50万円程度か。綾瀬にある3つの事務所のうち二つを処分して移転すれば全然買えるじゃん!」
で、ネットでこの物件を発見したその日のうちに自転車を走らせ物件を見に行きました。現地に到着したのは10月の晴れた日の昼頃。
どーん。
で、でかい。
不動産屋さんののぼりが立っていました。「内覧希望の方は電話ください。10分でカギを開けます」と。
で早速電話。
結局30分待たされたのですが不動産屋さんの営業マンが来てカギを開けてくれました。
玄関に入ると・・
おお!如何にも豪邸、って感じ。
そして40畳あるというリビングルームへ。
そしてここは東南角部屋。日当たりも最高で実に気持ちのいい部屋でした。
さらに4台入る駐車場。
屋上は広くて長めが最高!
和室は温泉旅館見たいじゃん、なんと素敵なんだ!
1階には店舗。ここで商売できるかな。それとも貸して家賃を得ようかな。
とにかく夢のようにワクワクする物件でした。一目ぼれです。
その場で件の信金の営業マンに電話。
「こんな物件を見つけました。ぜひ融資の相談を」
この信金マンは優秀な方で話の理解も早い。即答で・・・
「社長、ぜひ前向きに検討しましょう。ほかに取られてはいけませんから手付金も早々に打つくらいの勢いで」
この融資における銀行マン視点での「低リスク高リターン」は私でも簡単にわかるのでこの超前向きな即答は予想通りでした。
しかし、いざ買えるとなるとこれがまた悩むのです。
そうはいっても2億円近い買い物。
「この投資は会社にとって前向きなものなのか?」
一昔前、京セラがKDDIを買収する当時、あのカリスマ経営者、稲盛和夫社長が数か月悩んだという話があります。稲盛さんは自問自答を繰り返したのです。「動機は善なりや、私心なかりしか」
私も同じ心境に陥りました。「ホワイトパレスの購入動機は善なりや?私心なかりしか?」
この後すぐに2週間のヨーロッパ出張が控えていたこともあり、どちらにしてもすぐに購入の手続きに移ることはできない状況でした。
人生初のパリ観光。でも心の半分はホワイトパレスのことを考えていました。
ヨーロッパにいた2週間の間、私の心は揺れました。会社にとっては大きなチャンスかもしれませんがこの投資がピンチを招くかもしれません。
ある時期はむしろ「買わない」方向に気持ちが向いていました。52年間の人生でこれほど悩んだことはない、それほど悩みました。
この間、ネットで東京じゅうのビルの物件情報を見まくりました。2億から5億くらいの。まずはビルを買うことを前提にした時、ホワイトパレスがベストなのか。
その点においてはホワイトパレスの条件は「ダントツに良い」でした。
あとは、買うか、買わないか。
ネガティブファクターとなっていたのは駅からの距離です。現在の事務所は綾瀬駅から徒歩3分。それをホワイトパレスに移転すると社員の日常も来客にも不便を強いることになります。
決め手になるのはこの投資をリターンに変えることのできるような事業をホワイトパレスを使って創造できるか。この一点にありました。
(続く)
株式会社ちかなり (就職サイト合説どっとこむ 運営、2008年設立)
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3.このブログの著者
兵頭秀一
株式会社ちかなり代表取締役、フォトグラファー、東京経済大学体育会バドミントン部総監督、Facebook、Wikipedia、【著書】受かる面接、落ちる面接 人事経験者だけが知る採用と不採用の境界線(あさ出版)