就活シェアハウス運営日記

大学生対象、宿泊無料の就活シェアハウスin東京、運営日記

経営者が書いた就活本の感想文

兵頭が趣味でお付き合いいただいている、ある会社役員の方(匿名希望さん)が受かる面接、落ちる面接の感想文を書いてくださいました。なんと2700文字近くにも及びます。

 

この方は兵頭よりも年上で60歳過ぎの方。1000人近い従業員の会社のTOPの方です。趣味の世界でしかお付き合いがなく、それもまだ2年足らず。一緒に飲んだり食事をしたこともない関係でした。なので、いつも愛嬌をふりまかれている優しい方、という印象でそのお仕事ぶりや会社でのご活躍などは全く存じ上げていませんでした。

 

感想文を拝読して驚きました。それは完全に経営者の視点でした。今までは趣味の世界でのお付き合いでしたから軽いノリの「先輩」くらいの感じでお話をさせていただいていました。大変失礼しました。釣りバカ日誌のスーさんの正体を知ったような衝撃を受けました。

 

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では、以下その感想文です。


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著者は15年以上にわたって企業の人事担当者として実績を挙げ、さらにその後はIT上の就活サイトを開設して、会社を創設した方である。そのような経歴の人でなければ指摘出来ない数々の有益な助言がこの書には満ちている。限られた枚数ではそのいちいちについて、細かく紹介出来ないが私が感銘したことだけを記してみよう。

 

第一になるほどと感じるのは冒頭の第一章の第一項で、新卒採用では過去は問われず、未來のみが問われるという指摘である。実際人が二十歳前後の高校の3年間や大学の四年間で経験したものは、その後の人生で経験するものに比べればたかが知れている。受け入れる企業側が1番知りたいのはその人が何をやりたいかである。受験生はともすれば自分は何をしてきたか、どんなことをできるかを力説する。それは大きな間違えだというのである。専門家から見れば、彼或いは彼女がしてきたことは児戯に等しいのである。問題なのはなにがやりたいか?である。

 

そして、受験生が何をやりたいかと問われたときに、まず最も重要なことは覚悟であり、2番目に必要なことは志であり、能力は最後であると指摘する。二十歳前後の若者の能力は所詮若者の能力でしかない。大事なことは本当の能力を育て上げら覚悟と志だと、著者はいうのである。しかし、私は2番目に置かれた志が最も重要だと考えている。なぜなら、志に裏打ちされない覚悟は単なる居直りに過ぎないからである。

 

そうして、読んでいくと、この志というキーワードは別のところで大きな意味を持って生きてくる。例えば、第六章38項の役員相手の個人面接は主観面接であるという項目で、役員面接で問われるのはあなたが我が社と同じ志を持って働く同志になれるかどうかと太字に書かれた問いに応えることのできるのはいったい何だろうか?人事部相手の個人面接は客観的面接だが、役員や社長相手の面接は主観面接だと言われれば受験生は面食らうかもしれない。社長の人柄がわからない。もし、社長に嫌われたらどうしようと思うだろう。 だが役員ー経営者というものは人事担当者より会社の現状に不安を抱いている人である。このままではいけないと思い続けてる人である。それに比べれば人事担当者は会社の現状にある程度満足している現状維持派が多い。1番大切な最後の役員面接にあたってももっとも必要なことは、その会社の志望動機のなかにある受験生の志である。これは著者がもっともいましめている、就活期に経験のたまに色々な分野の企業を受けてみろとという助言の間違いにつながっている。いろいろな分野の企業を受けてみて、どれがいいか判断する日和見的な態度に経営者の志を感じないからである。

 

人事担当者は大部分が素人だという指摘も納得がいく。会社にとって1番大事なことは売上を伸ばして、業績を上げることである。そうでない分野の、例えば、野球で言えば打率2割前後の守備だけしか取り柄のないキャッチァーの位置に重要な人材を長く置くわけにはいかない。しかし、将来役員にしょうとする人材には必ず人を見る目を必要とするジンジノ仕事に短期間就かせる。いわば企業の人事担当者とは、将来幹部になるかもしれない素人の集団である。だから素人にも分かるように、自分の意思を丁寧に分かりやすく伝えるというのも、大切なことだという指摘も説得力がある。

 

この場合、受験生と面接者は対等なのである。どんな場合でも、人は他人に対するときに礼節をもって接する必要がある。受験生はびくびくすることもなく、また必要以上に自分を売り込もうと、肩を怒らせたり虚勢を張る必要もない。自分の志を丁寧なわかりやすい言葉で語ればいいのだ。こういうアドバイスは就活をする学部にとって極めて重要である。こうした点を抑えてゆけば、著者の考え方が極めて一貫しているのがわかるだろう!

 

第八章の35項にマズローの欲求5段階説を無視した就活という文章がある。三年で3割の新卒が辞める理由という一貫した文章の一項だが、ここに就活だけではなく、日本人の意識の中の大きな欠陥の指摘があるように思う。マズローの欲求5段階説とは、人間の欲求を5段階に分け、低位の欲求が満たされると、より高い断層の欲求を覚えるという説だが、それを就活における企業評価にあてはめると、第1段階は給料が悪くない、休日がある。残業が過剰ではないで最上段階では社会貢献ができるである。 しかし、実際の就活では、この5段階が逆転してしまうことが多いという。 社会貢献ができるということは、その会社が社会貢献が容易にできる有名有力企業であるということである。小さなスーパーやパチンコのチェーン店より、航空会社、鉄道、大手の広告会社や商事会社、銀行のほうが社会貢献は高い。そして、その会社とは、親戚や親の地上デジタル放送にどちらに就職がきまりましたかと訊かれたときも得意になって美しい報告ができる会社である。 だが、マズローの法則を無視した、そうした逆転の志向は、就職者本人がせっかく就職した会社が実は過労死するほど残業が多くて、自殺に追い込まれたり、あるいは、死なないまでも二年か三年で辞めざるを得ない羽目になるという不実な実例を沢山生んでいる。ことに、いまはほんとうに名もない企業の会社、プロ野球の球団を持てるほどの会社に成長したという例もあり、特にITの発達により商品の流通の方法が大きく変化して、AIによる第4次産業革命の時代と言われる現代では、今の大企業が果たして10年後に大企業であり続ける保証もないし、いまはほとんど無名の会社が大きな企業になる可能性も充分にあるわけだ。

 

著者はブラック企業を選ばない秘訣は、会社の知名度を選ばずに、自分に向いている仕事を選ぶべきだといっている。自分に 向いてる仕事とは好きな仕事である。人は好きなことでなければ熱意は湧かないし、熱意かないところに志がうまれるはすはないなである。そして、人間がほんとうに自分の能力を伸ばすには、5年10年では足りない。もっと長い年月が必要だと説く。就活の成果がほんとうに現れるのは、50,60,70,になった時である。 この会社に、この企業に勤めれは素敵な60歳を迎えられそうだとイメージできる企業を選ぶのが寛容、肝要だと言っている。

 

この本は就活中の若者だけでなく、どうしたら優秀で志のある若者を選び、真の能力に育て上げられるかに腐心している企業の人事採用担当者にも、是非とも読んで欲しい書である。

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出版して1年経過してもamazonのカスタマーレビューがゼロのこの本。初めて人からのしっかりした感想をいただいて、その内容も含め本当にうれしかったです。

 

匿名希望さん、ありがとうございます。



1.運営会社 

株式会社ちかなり (就職サイト合説どっとこむ 運営、2008年設立)

 

2.「宿泊無料!就活シェアハウスinTokyo」について

chikanari.hatenadiary.jp

 

3.このブログの著者

兵頭秀一

株式会社ちかなり代表取締役フォトグラファー東京経済大学体育会バドミントン部総監督FacebookWikipedia【著書】受かる面接、落ちる面接 人事経験者だけが知る採用と不採用の境界線(あさ出版)

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